4月22-23日(土日)は、東京国際フォーラムで年1回の日本呼吸器学会総会に出席してまいりました。いくつかの講演と内容をご報告いたします。

  1. 学会に『鉄の肺』と言われる陰圧式の人工呼吸器が展示されていました。これは市立静岡病院に保存されているもので、日本では1950-1960年に100台強ありました。その後現在のような陽圧式人工呼吸器が主流になっており、医学の進歩の遺品となっています。
  2. ネーザルハイフローという高酸素流量が流せる酸素吸入器が展示されていました。通常のマスクでなく、鼻から高濃度の酸素が供給されますので、呼吸不全の方には適したものです(二酸化炭素がたまらないような方にですが)。病院勤務時代にも使用しておりましたが、在宅でも使用できるように期待します。
  3. 下記は私が内容の良かったと思った講演です。

  4. 刀根山病院呼吸器部長の北田清悟先生が、肺非結核性抗酸菌症の話をされました。大きな講堂でしたが、聴衆が多すぎて皆が中に入りきらないくらいの人気でした。私も中に入れず、入り口の隙間から何とか聴講しました。
  5. 国立がん研究センターの腫瘍免疫研究分野の西川博嘉先生が、肺癌での免疫的治療を話されました。いわゆる免疫チェックポイント阻害剤の話を基礎から最新の治験結果まで話していただきました。オプジーボを先頭に、いろんな治療薬が現在も開発されています。
  6. 自治医科大学呼吸器内科坂東政司教授が、年末・年始にでた2つの間質性肺炎のガイドラインの話をされました。『特発性間質性肺炎の診断と治療(改訂第3版)』と『特発性肺線維症の治療ガイドライン2017』の2つで、今後の使用にあたって理解が進み、注意点などを話して頂きました。
  7. 福岡大学呼吸器内科元教授の渡辺憲太郎先生がPleuroparenchymal fibroelastosis(PPFE)について説明されました(日本名は適当なものはなく、なかに上葉限局型肺線維症と発表されているものもありました)。これはもともと網谷病といわれていた日本発の病気に近いもので、古い結核性胸膜炎と思われていたものの中に多く含まれています。当クリニックでも始めてご指摘させていただいて、ご通院されている方もおられます。
  8. 和歌山県立医科大学呼吸器内科教授の山本信之先生が、最新の肺がん診療ガイドラインを話されました。最近の肺がん治療の講演会はどうしても免疫チックポイント阻害剤の話に集中されますが、現在これ以外にも多くの薬が使用できるようになっております。新しくでてきた多くものは、分子レベルで目的とする治療部位別に使用します。かなり複雑化しており、頭の整理になりました。
  9. 大分大学呼吸器科教授も門田淳一先生が、新肺炎診療ガイドラインを講演されました。これまでのガイドラインは、市中肺炎と院内肺炎と医療・介護関連肺炎の3つの病型ごとに作られていましたが、1つにまとめられました。かなり使用しやすくなった印象でした。
  10. 北里大学学長の小林弘祐先生が、呼吸器機能障害の身障者診断書・意見書の変更点を説明していただきました。今後の臨床に役立つ内容でした。
  11. 多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎について、2人の先生が話されました。東京女子歯科大学リウマチ科臨床教授の川口鎮司先生と神奈川県立呼吸器センター副院長の小倉高志先生が、免疫内科と呼吸器内科についてそれぞれの立場から診断と治療が解説されました。人による違いもあるかと思いますが、やはり異なる科による考えの差が対応の違いにでているように思えました。

年1回の総会ですが、本当に勉強になります。これだけまとまった話を聞けることは通常ではないので、また来年もぜひ参加したいものです。

ふなこし呼吸器内科 院長 船越俊幹