12月は、インフルエンザA型の患者さんや発熱や咳の方が多くおられました。ご来院の方は待ち時間が長くなり、ご迷惑をおかけしました。当院のご対応できる限界を超えていたので、ほぼ1月中は初診の方にご来院を控えていただき、申し訳ありませんでした。ようやく1月末から、初診の方の対応できるようになっております。
講演会もあまりなかったのですが、上記のような理由で、あまり視聴できませんでした。今回は興味のある論文とそのレビューについて、自分なりに要約したので記載いたします。論文はERJに載ったEmilsson氏らが発表したもので、レビューは近畿中央疾患センターの倉原優先生のものです。
タイトルは、『2世代にわたる咳の遺伝率:RHINESSA研究』です。
目的:咳の遺伝性はあまり研究されていないので、咳のある人の子が咳を発症する可能性が高いかどうかを、咳の種類(乾性咳嗽(痰の少ない)/ 湿性咳嗽(痰の多い))によって評価されています。
方法:RHINESSA世代研究(北欧、スペイン、オーストラリア)には、2000年と2010年に詳細な質問票に回答した7155人の親(当初30〜54歳)と、2012〜2019年に同様の質問票に回答した20歳以上の8176人の子が対象です。慢性咳嗽は、乾性咳嗽と湿性咳嗽に分類されています。親と子の咳嗽の関連性は、ロジスティック回帰を使用して分析されています。年齢、性別、BMI、喫煙歴喘息の有無・・・等々で、調整されています。
結果:乾性咳嗽のある親の場合、その子の 11% が乾性咳嗽を報告したのに対し、乾性咳嗽のない親の場合は 7% で、調整オッズ比 (aOR) は 1.59 (95% 信頼区間 1.20–2.10) でした。湿性咳嗽のある親の場合、その子の 14% が湿性咳嗽を報告したのに対し、湿性咳嗽のない親の場合は11% で、aOR は 1.34 (1.07–1.67) でした。
結論:慢性咳嗽の親は、(親の喘息とは関係なく)慢性咳嗽の子供を持つ可能性が高い(特に女性でこの傾向が強いようです)。咳嗽の種類は重要で、親の乾性咳嗽は子供の乾性咳嗽とのみ関連し、湿性咳嗽同士についても同様でした。しかし互いに湿性咳と乾性咳と異なる場合だと親子での関連はなかったとのことです。
レビューされた倉原先生は、親子なので生活環境の影響が排除できないのと、特定の遺伝子変異は同定されていないとのことで、仮説の域はでないとの判断でした。しかし他遺伝的な咳を支持する論文も出てきており、今後の報告が待たれるかと思われます。
ふなこし呼吸器内科 院長 船越俊幹