小児喘息
はじめに
当院は6歳以上のお子さんを見させていただいておりますが、今回小児喘息の理解に少しでも役に立てればと思い、その内容をまとめてみました。
喘息を理解するために
まずとっつきにくいですが、「喘息は(肺の管の)気道が慢性に炎症を起こしている」と言われていることを覚えてください。
また、喘息を起こしやすい状態が遷延することを「気道の過敏性が亢進している」と言います。この状態があまりにも長く続くと「リモデリング」という気管支の粘膜が厚くなり、元に戻らない状態になってしまいます。
そうなると将来的に肺機能が低下することがわかっています。
これを絶対に起こしてはいけないと思います。ですので、小児の方の喘息は、しっかりと取り組む必要があります。
小児喘息の頻度は?
小児気管支喘息の8割の方が3歳までに発症しています。6−7歳でおおよそ16%程度、13−14歳でおおよそ11%程度のお子さんが喘息を持っておられます。その後中学生・高校生と徐々に減っていきますが、一方毎年その数は増加しています。
男女比は小学生までは男子が多いですが、高校はほぼ同数になります。
全く成人になって発症のない方もおられますが、30〜40代で何年ぶりに発症したと来院される方も少なくありません。また喘息のお子さんでアトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎を合併しているのは15%前後です。
小児喘息の悪化因子
まずは、患児自体の要因と患児の周囲の環境的な要因をあると言われています。
患児自体の要因はもともとの素因がその大きな要因です。患児のご家族が喘息に罹っておられるかなどは大きく関係します。
周囲の環境的な要因として一番影響するのは、アレルゲンです。
室内アレルゲンはチリダニやペットなど動物由来のものとアスペルギルスなどカビ由来のものが代表です。屋外アレルゲンは花粉などが代表的です。もちろん通常の風邪など感染も増悪する要因になり得ます。
他には、低気圧などの気象変化と運動とストレスなども増悪する因子になります。特に冷たく乾燥した空気のもとで運動すると喘息を誘発しやすくなります。当院でも冬のマラソンができない小児の喘息の方がよく来院されます。
特に小児の方は、喘鳴(ゼーゼー)だけでは喘息は診断できません
喘息の診断は典型的な喘息発作を繰り返し起こすようになれば、比較的容易に診断ができます。しかし成人とは異なり、気管支自体が柔らかいこともあり、喘息発作に特有な喘鳴は、風邪をこじらしたりするなど他の原因でも生じます。
喘息と他の要因を厳密に区別することが大事です。
当院は、まず病歴やアレルギー状態をよくお聞きして、次に呼吸音などを聴取します。さらに胸X線や喘息の指標を示す呼気の検査などを行い正しい診断に導ければと思います。
また必要があれば、肺機能を評価するためにスパイロメーターという検査を行い、肺の障害度を確認します。
目標
現在成人も同じですが、健康なお子さんと全く遜色なく過ごせることです。これは大袈裟でなく、ガイドラインにも述べられています。
方法
- 患児及び親御さんに喘息について知ってもらうこと
- 悪化因子の対策すること
- 薬物治療(※6歳以上)
の3つになりますが、どれも大切です。⒈と⒉はこの項を読んで頂いて、少しでもためになれればと思います。御来院できるようなら、詳細にご指導いたします。
薬物治療
コントローラー(長期管理薬)と呼ばれる気道炎症を抑えるステロイド吸入薬とレリーバー(発作治療薬)と呼ばれる気管支拡張剤の2種類があります。気道過敏性を抑えるには、このコントローラーが一番で、主役の薬となります。
コントローラーの中で、6歳以上ではまずドライパウダータイプ(DPI)が選択されます。スペーサーと呼ばれる吸入補助器は不要ですが、吸引力が必要となります。エアゾールタイプ(pMDI)もありますが、スペーサーとともに使用することが望まれます。
一般に両者とも妊婦さんでさえ使用できる副作用の少ない薬です。
ドライパウダータイプの吸入は、早く深く1〜2秒間で吸入するようにします。
急性の喘息発作
気管支拡張剤の吸入タイプのものが、第一選択になります。しかしこれらは即効性がありますが、頻用していると効果が低下してしまいます。コントローラーを治療の基本にして、過剰使用など依存しないことがポイントです。
最後に
喘息が慢性疾患であり、症状がなくてもその活動性があると理解しておくことが必要です。
実際当院でも、治療を自己中断してしまう一番の年代が、小学生高学年から高校生です。治療の主体が親御さんから本人に移行することが大きな原因とされています。
症状の安定することがある夏季は薬を減らすことがありますが、春や秋などの増悪しやすい季節はしっかりと治療していただきたいと思います。