肺抗酸菌症(結核やMAC)
お耳にされたことがないと言われる方も多いかと思います。
これは結核を含めた菌類によっておこる感染症の総称です。原因菌として“結核”と“非結核性抗酸菌”の2つがあります。
結核に関しては、やはり注意すべき病気とご認識されていると思います。
先進国の中で日本に多く、大阪が特に多いとされます。日常よく目にしますし、珍しい病気ではありません。診断をつけるのは、実は容易でない場合も多いのですが、これはわたくしども呼吸器内科におまかせいただきたいと思います。また感染症法にともなう第2類感染症とされて、診断されると直ちに医師が最寄りの保健所に届けるようになっています。私も過去多数の方で届けを出させていただきました。
一方、非結核性抗酸菌症はさらに聞いたことがないといった方が多いと思います。
しかし最近、この中のMAC(非結核性抗酸菌症の約80-90%程度の原因菌)といったタイプの菌が、特に中高年の女性(やせ型の方で)に急に増えてきています。私の外来でも、この数年来院されて、経過を見させていただくようになった方が急増されています。結核の仲間でありますが、その性格は全く正反対となります。結核とは異なり、人には移りませんし、ほとんど動かない人も多くおられます。しかし中に悪くなる方おられますが、完治できる薬は今のところありません。このMACという菌ですが、土壌や浴室などから検出されるとの報告があり、生活環境に広く存在しているとされます。
■ 結核と肺MAC症の違い
結核 | 肺MAC症 | |
---|---|---|
感染経路 | 人から人へ | 環境(土や水)からうつる。 人から人にはうつらない。 |
進行の早さ | 数ヶ月単位で進行 | 数年単位で進行 |
薬 | 治療薬と使い方が 確立しており、 98%が根治可能 |
根治できる薬は まだない |
患者の特徴 | 男性が6割 | 中高年女性が多い |
肺抗酸菌症の治療
結核の治療は、ガイドラインで詳細に治療方法が明文化されていて、線路に乗って治療を遂行できるといった感じです。また発生届けとともに医療費公費負担制度がありこれも同時に申請いたします。
■ 肺結核症の治療
■ 肺結核内服薬
- リファンピシン
- イソニアジド(ヒドラジド)
- ストレプトマイシン
- エタンブトール
- ピラジナミド
かたやMACの治療に関しては、まだ問題とされることが残されています。まず完治でいるといった薬がありません。抗生剤3種類は年単位で内服することになりますが、1日の内服量としては結核加療に近い内容です。結核でも3剤内服ですと基本的に9ヶ月ですが、MAC治療の多くの方は2年間程度の内服が予想されます。副作用などを考えると75歳以上の方ですと、年単位の内服継続は少し困難ではないかと考えます。
■ 肺MAC症の治療方針
軽傷 | 中等症 | 重症 | |
---|---|---|---|
50歳未満 | 手術 ※1化学療法 ※2 | 手術 化学療法 | 化学療法 |
50~69歳 | 手術 化学療法 | 対症療法化学療法 | 化学療法 |
70歳以上 | 対症療法化学療法 | 対症療法化学療法 | 化学療法 |
※1…気管支が壊れていれば
※2…気管支が保たれていれば
● 初診時の重症度と年齢によって治療方針は異なるが、個人の体力を考慮して判断する。