喘息とアンチドーピング薬
新潟医歯学総合病院呼吸器内科病院教授小屋俊之先生が、アスリート喘息とその治療について講演されました。内容が秀逸でしたので、特にアンチドーピング薬を中心に下記まとめてみました。
■ 運動競技と喘息症状
普段問題なくても、運動競技により喘息が増悪されるアスリート喘息の方がおられます。また通常の喘息患者様においても、運動時にも喘息が増悪される方もおられます。
両者共に目的のアスリート競技の最大限のパフォーマンスを上げることが、治療目標です。実際競技現役の時に喘息症状が悪化されていても、引退後に改善する方もおられます。
しかし、治療の進歩によって、現在はオリンピック選手においても、喘息の有無で成績が悪くなるような事実は無くなっています。
■ 喘息薬の使用可否の一覧
下記に世界アンチドーピング機構(WADA)の2024年の喘息薬の使用可否の一覧を示します。○は許可されています。
治療 | WADAの許可 |
---|---|
吸入ステロイド | 〇(申請・申告は不要) |
経口・静注ステロイド | 禁止 |
ロイコトリエン拮抗剤 | 〇 |
テオフィリン | 〇 |
吸入コリン薬 | 〇 |
生物学的製剤 | 〇 |
吸入β2刺激薬 | サルブタロール・サルメテロール・フォルメテロール ビランテロールは通常量は、申請・申告は不要。 それ以外はTUE申請*が必要です。 |
*JADA(WADA傘下の日本版)のHPにおいて、目的の使用薬剤の使用是非については検索可能です。禁止されている場合は、JADAに治療使用特例申請(以下TUE申請)が必要(申請データはJADAのHPよりダウンロード可能です)です。
■ ドーピングに注意する喘息薬使用
繰り返しになりますが、逆にドーピングに注意する喘息薬使用をまとめます。
① 一般に出ている吸入ステロイドとその合剤(アテキュラはTUE申請)とロイコトリエン拮抗剤とテオフィリン剤とコリン吸入剤は通常量は使用可です。
② 注意が必要なのは、まずステロイド以外の吸入剤のうちのLABAとSABAで、オンブレス(+エナジア)とスピオルト吸入とメプチン吸入はTUE申請必要です。ホクナリンテープとメプチン錠もTUE申請必要で許可されないこともあります。またスピロペント錠は、筋肉増強作用があり禁止です。
また、今回日本水泳連盟のHPに掲載されている喘息薬とアンチドーピングの状況を下記に示します。
当院でも、アスリートの方にご通院いただいておりますが、ドーピングに関しては細心の注意を払っています。しかし競技により禁止薬が異なりますので、コーチなどと使用薬剤は確認を取っていただきたいと思います。