今回、日本細胞診学会総会春季大会が新型コロナ感染症のために、web上での開催となりました。web上となりますが、視聴したもので興味深いものを取り上げてみます。12演題を視聴しましたが、下記3つが興味深かったです。

  1. まず北里大学感染制御学の先生が、『病院感染対策の実際』というタイトルで・感染症の歴史・薬剤耐性菌と対策・新型コロナウィルス感染症の3項目に関して講演を視聴しました。日本の抗菌薬の特徴としてペニシリン抗生剤の使用が少ないことを指摘されました。また昨今の状況より新型コロナウィルス感染症についても多く話されました。ウィルス暴露後5日目が一番多く発症して、8日目がPCR等の検査が陽性になりやすいとのことでした。感染予防はやはりマスクや手指衛生が有効で、うがいはあまり効果的ではない確認しました(ただし通常の風邪には、水うがいは有効とされています)。またACE(アンギオテンシン変換酵素)が、新型コロナウィルスの生体への取り込みに関与するとのことで、これに阻害するする中心的な降圧剤であるACEI(アンギオテンシン変換酵素阻害剤)とARBs(アンギオテンシン受容体拮抗薬)が、感染を助長すると言う疑いがありました。しかしNEJMと言う臨床では世界一、二位を争う雑誌において、大規模なイタリアからの報告を引用されて、これを否定する結果が出たことを教えていただきました。また一時、NSAIDSと言われるポピュラーな鎮痛・解熱剤もリスクになると言われていましたが、この報告ではやはりその証拠は出ませんでした。
  2. 次にがん研究会有明病院呼吸器センター顧問宝来威先生が、『呼吸器細胞診の歴史と肺癌の臨床』とのタイトルで、先人の方々の取り組みと現在までの流れをスライドで、説明いただきました。宝来先生は私が若い頃に国際癌センターで細胞診を教えていただいた方で、音声から懐かしく思いました。
  3. 最後に京都大学医学部病理診断科准教授吉澤昭彦先生が、『日本における呼吸器細胞診判断基準:国際化を目指して』とのタイトルで、今後の細胞診の未来につながる話しをされました。細胞診の判断を4つのカテゴリーに分けるといったことがポイントです。陰性・異形細胞・悪性疑い・悪性にカテゴライズされますが、個人的は分かりやすく、実臨床にあった良い基準になるのではと思いました。

 今までは、web講演会はもう一つ臨場感がなく、馴染めませんでした。しかし今までの会場参加型の学会では、聞きたい講演が重なった時は一方を我慢せざるを得ませんでした。今回はそんなことはなく、視聴したい講演を全て視聴できました。今まで食わず嫌い気味であったのかと反省しました。会場参加型の学会では、日頃お世話になっている先生方との挨拶や交流の場でありました。しかしそれを差し引いても、今後は新型コロナウィルス感染症が鎮静化した後も、webでの参加が学会視聴の中心となっていくのではと思いました。

ふなこし呼吸器内科 院長 船越俊幹